「手術後から続く耳鳴り。原因は耳ではなく”水の流れ”だった」

2年前に左の耳下腺の手術を受けてから、左耳だけボーンボーンと鐘が鳴っているような耳鳴りが止まらない。不快で仕方がない。

そんな方が来院されました。鍼灸は初めてとのこと。

お話を聞くと、耳鳴り以外にも下痢をしやすい、体が冷える、体が重い、時々膝が痛むといった症状がありました。一見バラバラに見えるこれらの症状ですが、東洋医学の視点で体を観察すると、一つの共通点が見えてきました。

「水の巡りが悪い」ということです。

東洋医学では「水滞(すいたい)」と呼ぶ状態で、体の中の水分がうまく循環できずに滞ってしまっている。下痢も、冷えも、体の重さも、この水の滞りから説明がつきます。

そして、耳鳴りのある左耳の周辺、つまり左の首だけが筋肉が硬く緊張していました。水の流れがちょうどこの部分で詰まっている。耳鳴りに限らず、耳の症状は首の状態と深く関わっていることが多いのです。

施術は耳にも首にも触れていません。右膝と左手首のツボに施術を行い、水の巡りを整えました。すると左の首の緊張がゆるみ、耳鳴りが止まりました。

ご本人は耳鳴りが取れたことにも驚いていましたが、それ以上に「体全体が軽くなって、温まってくる感覚がある」とおっしゃっていました。耳鳴り以外の症状も、根っこは同じだったということです。

ところが、ここで壁にぶつかります。

同じ治療を5回続けたのですが、施術直後は良くなるのに、1週間経つ頃にはまた耳鳴りが戻ってしまう。方針は間違っていないはずなのに、なぜ持続しないのか。

もう一度、丁寧に体を観察し直しました。すると、見落としていたものが見つかりました。

手術跡の部分で、経絡(けいらく)の流れが物理的に途切れていたのです。

経絡とは東洋医学でいう体のエネルギーの通り道です。手術でメスを入れたことで、その通り道が断ち切られていた。いくら水の流れを整えても、通り道自体が途切れていたら、また滞ってしまうのは当然です。

途切れた経絡をつなぎ直すように施術した上で、いつも通り水の巡りを整えました。すると今度は2週間耳鳴りが出ませんでした。もう一度同じ施術を行い、次は1ヶ月出なかったので、経過観察に移りました。

手術後から体調が悪くなった、という方は少なくありません。 その原因の多くは、手術によって経絡が物理的に途切れてしまうことにあると考えています。手術自体は成功しているのに、なぜか体調が戻らない。そんな方は、この「経絡の途切れ」が残っている可能性があります。

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